第二生化マニュアル目次
当教室で行われている主な蛋白定量法は、1)紫外吸収法、2)Bradford法、3)Lowry法の三つである。三者にはそれぞれ、長所、短所がある。また、同じサンプルでも定量法によって、結果に大きな差が見られることも多い。よって、それぞれの特徴を知り、一連の実験では統一された測定法を行うことが望ましい。
1)紫外吸収法
(原理)280 nmにおけるチロシン、トリプトファンの吸収を測定。
(長所)操作が簡便、サンプルの回収が可能。
(短所)蛋白質によって吸光係数の差が大きい。核酸など、他に吸収を持つ物質があると不正確になる。
(定量範囲)100-1000 μg/ml
(測定法)吸光計にて280 nmの吸光を測定する。A280=1.0=1 mg/mlとして計算。A280/A260 <1.5
の時は核酸の混入が考えられるので、他の方法を検討すべきである。
2)Bradford法
(原理)クマージーブルーが蛋白質と結合する際の吸光の変化を測定。
(長所)操作が簡単、妨害物質が少ない。
(短所)蛋白質によって発色率に差がある。界面活性剤の混入により不正確。
(定量範囲)25-200 μg/ml (5倍希釈液使用時)、5-25 μg/ml (原液使用時)
(測定法)
(5倍希釈液使用時)
96穴のプレートにバックグラウンド(通常は水かバッファーを使用), スタンダード(私はBSA を使用)、サンプル液を20 μl
ずつ入れ、これにBiorad protein assay dye reagent の5倍希釈溶液を200 μlずつ加える。バックグラウンドとの吸光の差を595
nmで測定し、スタンダードから描いた標準直線(になるはず)から蛋白濃度を求める。サンプル液が濃いときは、適当に希釈する。
(原液使用時)
エッペンドルフチューブにバックグラウンド(通常は水かバッファーを使用), スタンダード(私はBSA を使用)、サンプル液を800
μl ずつ入れ、これにBiorad protein assay dye reagent の原液を200 μl ずつ加える。
(注意)
実はBSAは、この方法では発色率が高いので、Bradford法のスタンダードとしては不適当です。(しかし、世界的にも使用されているのが不思議)なお、スタンダード、サンプルともにduplicateで行うのが望ましい。
3)Lowry法
(原理)フェノール試薬とが蛋白質(チロシン、トリプトファン、システイン) と結合する際の吸光の変化を測定。
(長所)感度が高い。
(短所)妨害物質が多い。蛋白質によって発色率に差がある。時間がかかる。
(定量範囲)5-100 μg/ml
(測定法)
@ストック試薬
(a) 2% Na2CO3 in 0.1 N NaOH
(b) 0.5% CuSO4・5H2O (in 1% 酒石酸ナトリウム)
(c)1 N フェノール試薬(2N Folin and Ciocalteu reagentが市販)
(d)アルカリ性銅溶液(用時調整)(a) 5 ml +(b) 0.1 ml
96穴のプレートにスタンダードとバックグラウンド(通常は水かバッファーを使用)、サンプル液を20 μl ずつ入れ、これに(d)を100
μl ずつ加え、室温で10分放置する。(c)を10 μl ずつ加え、30分放置。バックグラウンドとの吸光の差を750 nmで測定し、スタンダードから描いた標準直線(逆対数グラフ)から蛋白濃度を求める。筆者は使用したことがないが、Bioradからキットが発売されている。
4)スタンダードの作成法
微量天秤でおよその質量を計り、吸光計で正確に合わせる。通常1 mg/mlのストックを作る。1 mg/ml溶液の280 nmにおける吸光度はBSA
0.63, Ovalbumin 0.75である。
(参考文献)
新生化学実験講座1 タンパク質 1 p85-107
ラボマニュアル遺伝子工学 増補版 p134-135
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