03.SDS-PAGE(SDS-Polyachrylamide gelelectrophoresis)(横溝岳彦)


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タンパク質をSDSにて変性させ、一様に負の荷電をもたせて、分子量に従ってゲル上にて分離する手法である。主として、15 cm x 15 cm x 1 mmのゲルが頻用される。ゲルは分離用ゲル(separation gel)と濃縮用ゲル(separation gel)の二層よりなり、まず分離用ゲルを固めたのち、濃縮用ゲルを重層する。分離目的のタンパク質の分子量により、使用するゲル中のアクリルアミドの濃度を変える必要がある。一般に分子量の小さいタンパクほど速く(下に)泳動される。目的とするタンパク質の分子量によってゲルの濃度を変えなければならない。およその範囲は以下の通り。

アクリルアミド濃度(%)     5    10    15 
タンパク質の分子量(kD) 60-200 16-70 12-45


@Stock solution
AA:Bis (アクリルアミド38%, ビスアクリルアミド2%)(暗冷所保存)
1.5 M Tris-HCl pH 8.8
0.5 M Tris-HCl pH 6.8
10 % SDS
10 % AMPS (Ammonium persulfate ) (暗冷所保存)
TEMED (暗冷所保存, 共通試薬)***これを入れると重合が始まるので最後に加える。

@混合比(ml)

分離ゲル                 8%     10%    12%    15%
AA:Bis                   4       5      6     7.5
1.5 M Tris-HCl pH 8.8    5       5      5      5 
10 % SDS                0.2     0.2    0.2    0.2 
10 % AMPS               0.2     0.2    0.2    0.2
TEMED                   0.02    0.02   0.02   0.02 
水                     10.58    9.58   8.58   7.08

濃縮ゲル                 3%       4%       5%
AA:Bis                  0.75       1      1.25     
0.5 M Tris-HCl pH 6.8   2.5      2.5      2.5 
10 % SDS                0.1      0.1      0.1 
10 % AMPS               0.1      0.1      0.1
TEMED                   0.01     0.01     0.01
水                      6.54     6.29     6.04


5xサンプルバッファー
125 mM Tris-HCl pH 6.5
25 % Glycerol
5% SDS
0.25 % BPB
5 % 2 ME(メルカプトエタノール)(使用直前に加える)
10x電気泳動用緩衝液 (1L あたり)
Tris 30.3 g
Glysine 144 g
SDS 10 g

CBC染色液
CBC R-250 0.1 %
Methanol 50 %
酢酸 10 %

脱色液
Methanol 10%
酢酸 7%

@ゲルの調整
1)ゲルガラスをエタノールで洗浄し、液漏れ防止用のテフロンチューブをはさんで4つのクリップで止める。この時、テフロンチューブを蒸留水で濡らしておくとよい。組み立てたゲル板に蒸留水を注いで、液漏れのないことを確認しておく。(その後、良く水きりをしておかないと、ゲルの濃度が変わってしまうので注意。)
2)上に示した割合で試薬をまぜ、気泡を作らない用にゲルに流し込む。高さは8割位が適当。ゲルの上端が乾燥しないように、水(熟達者)又は水飽和ブタノール(初心者)を5mmくらい重層する。
3)15分位でゲルが固まるので、重層したブタノールを良く洗い、濃縮ゲルを作って、重層し、素早くコームを差し込む。やはり、15分位でゲルが固まる。
4)テフロンチューブをはずし、下に気泡が入らないようにして電気泳動用緩衝液を満たした泳動槽に立てる。気泡が入った場合は25 Gの針とシリンジで取り除く。上にも電気泳動用緩衝液を入れ、コームを静かに抜く。溝にたまったゲルかすをシリンジを用いて取り除く。
5)サンプル 4、サンプルバッファー1の割合で混合し、エッペンドルフチューブのふたが開かないように金網で押さえながら、5分間煮沸する。室温に戻したら、溝にアプライし、マーカーを端のレーンに入れて泳動する。筆者は10%ゲルでConstant voltage 150 V, 90 minで泳動しているが、より低い電圧でゆっくり泳動したほうがきれいに分離できる。BPBのマーカーが先端に来たら泳動を中止する。
6)泳動槽からゲル板をはずし、軽く水洗したのち、ガラス板の間にカッターの刃を入れてこじ開ける。左右に切り目を入れて静かにガラスからはずし、CBC液で染める。この際、ゲルの左右がわからなくなるおそれのあるときは、ゲルの左上に切り目を入れるなどして印を付けておくほうがよい。(5分から1時間、長いほうがきれいに染色されるが、脱色にも時間がかかる)ついで脱色液につけて、軽く震盪しながら脱色する。この時、キムワイプを数枚いれておくと脱色が早い。
7)脱色後の保存;濾紙を水でぬらし、ゲルを重ね、サランラップでおおってゲルドライヤーで乾燥させる。

(参考)
最近、AAとBis AAの濃度の割合を変化させることで、特定のタンパク質の分離を良くする手法が用いられるようになった。(例えば、リン酸化型MAPKと非リン酸化型MAPKの分離など)。
また、Loading前の変性に関しても、Boilingで行うやり方と、比較的低温で長時間をかけるやり方(65℃15分など)があり、目的によっていくつかを試行錯誤する必要がある。
また、Ready-madeのゲル(第一化学など)もあるが、高い(一枚1200-2000円くらいする)ので、条件を厳密にそろえる必要のあるWester blottingや、Gradient gelを使う必要のある場合をのぞいて、自分で作るように心がけて下さい。

(コメント)

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