ウェスタンブロッティング(和泉孝志)

第二生化マニュアル目次

1.はじめに

通常SDSーPAGE後、メンブレンフィルターに吸着させたタンパク質を特異抗体を用いて検出する方法である。ブロッティング方法として(1)水槽型、(2)セミドライ型があるが、ここでは操作が簡単で速いセミドライ型について述べる。検出方法としては、2次抗体の種類によって、(1)AP(アルカリフォスファターゼ)法、(2)HRP(Horse Radish Peroxidase)法、(3)125I-Protein A法(抗体ではない、高感度)などがあるが、ここでは操作が簡単で基質の安全性の高いAP法について述べる。

2.用意するもの

 A.泳動のすんだSDSーPAGEゲル
  泳動時に Rainbow Marker (Amersham RPN756) 5μlを同時に流しておくとマーカーとして、またブロティング効率の推定のために便利。

                myosin                    200    KD  	blue
                phosphorylase b            92.5  KD  	brown
                BSA                        69    KD  	red
                Ovalbumin                  46    KD  	yellow
                carbonic anhydrase         30    KD  	orange
                trypsis inhibitor          21.5  KD  	green
                lysozyme                   14.3  KD  	magenta

 B.メンブレン 1.ニトロセルロース(Amersham Hybond C 0.45 μetc.)
           操作が簡単でブロッキングも短くてよいが泳動しすぎる
           危険がある。バックがきれい。
        2.PVDFメンブレン(BIO-RAD etc)
           主にシークエンス用、ブロッキングを長くする必要あり。           泳動しすぎる危険はない。バックの発色あり。
           メタノール(数秒)、転写液(15分)にて湿しておく
           必要がある。その後乾かしてはいけない。
  ここでは1について述べる。

 C.泳動液 100ml
       10 x Tris-Glysin   10 ml (10x, 1l = 30 g Tris, 144 g Glysin)
              メタノール        20 ml
       水            70 ml
              10 % SDS            0.2 ml 
       (混合後3分ソニケート、長くしすぎると塩が析出する)

 D.ブロッキング液 (FCS 10-20%, BSA 1%, OVA 1%, or Skim Milk 0.5%)
  Skim Milk が手軽で安い。ブロックエース(雪印製、大日本製薬)として市販。
 E.TBS (20 mM Tris-HCl pH 8.0, 0.15 M NaCl)
 F.T-TBS (TBS + 0.1 % Tween 20)
  E、Fは洗浄瓶に入れておくと便利 (Stock: 20 x TBS, 10% Tween 20)
 G.AP反応液(100 mM Tris-HCl pH 9.5, 5 mM MgCl2, 100 mM NaCl)
 H.100 x AP基質液(a. NBT 50 mg/ml 70% dimethylformamide, b. BCIP 50 mg/ml    dimethylformamide) 10 ml反応液にa液66μl,b液33μlを混ぜる。
  (G、HはBIOーRADからKitとして販売されている。)
 I.一次抗体液:Monoclonal Ab (1-5 μg/ml) Polyclonal Ab (100-1000 倍希釈)
  titrationの必要あり。Monoclonal Abの場合 Culture Sup. をそのまま使用できることもある。希釈する場合はTBSBSA(1%)などで行う。NaN30.02%を入れておけば4℃保存で10回以上使用可能。
 J.AP標識二次抗体液。抗マウスヒツジ抗体、抗ウサギヒツジ抗体など。
  市販。500-3000倍希釈。TBSBSAやTBS+1/10ブロックエースで希釈。
 K.Whatmann 3M paper
 L.ブロティング装置

3.手順

A.ブロティング
1)ゲルの大きさに切ったB、K(4枚)を用意し、ゲルとともにCにつけ3分振る。
2)図のように下から順番に気泡に注意しながらのせる。

3)最後に重い本(生化学辞典、シグマのカタログなどが重宝)を上におく。
4)200 mA(定電流)30-60分転写
 (10%ポリアクリルアミドゲルの場合、目的タンパク質の分子量にもよる)
5)メンブレンをTBSで洗う。ゲルは確認のために染色する。

B.抗体による検出
以後の操作は室温でのshakerによる震盪である。
1)ブロッキング。D液,15分
2)TBS,5分2回
3)一次抗体,1-2時間。または4℃ over night。
4)TBST,5分。TBS,5分2回。(一次抗体は回収して再使用)
5)2次抗体,30分-1時間
6)TBST,5分。TBS,5分3回。
7)AP反応液に基質を加えメンブレンを浸す。
8)発色してきたら(5-15分)、水でよく洗い、ろ紙上で乾かす。
9)光を避けろ紙にはりサランラップでカバーして保存する。

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