第二生化マニュアル目次
0.DNAの基礎の基礎
1.フェノール・クロロフォルム抽出
【基本】DNA溶液から、蛋白などを除くためにおこなう。フェノールとクロロフォルムの割合は、通常1:1で使用するが、フェノールが多いほど、核酸のフェノール層へ逃げやすく、回収率が悪くなる。クロロフォルムを入れないと、水層へのフェノールの混入が多くなる。逆に、クロロフォルムが多いと、除蛋白率が落ちる。また、pHが酸性になると核酸が、フェノール層に逃げる。除蛋白率を上げるため、通常、SDSとEDTAを入れる(それぞれ終濃度0.5%と10mM程度)水層からフェノールを除くためには、普通はエタノール沈殿で充分だが、完全に除くためには、エタノール沈殿前に、エーテルや、クロロフォルム抽出を行う。
【操作】核酸を含む水溶液に、SDSとEDTAを加え、等量のフェノール・クロロフォルムを加えボルテックスで、よく撹拌する。(この後、短時間冷やすとより分離がよいが、通常必要ない)、エッペンドルフチューブで最高速(14Krpm)で30秒以上遠心、(容量の多い場合は低速遠心機の3Krpm,10分程度でも可)、水層とフェノール層が分離する。上の水層を注意深く別の容器に移す。中間層は取らない。この操作1回での除蛋白は完全ではない。完全に行う場合は、3回以上繰り返す。
【試薬】フェノール:水飽和、Tris飽和、TE飽和など、目的に応じて作る。市販の核酸用フェノールを55℃程度で溶かし、等量の水、(または1M Tris-HCl, pH8.0)を加えよく混和する。(時間があれば、こ室温で一晩、スターラーで撹拌する。)上清を除きもう一度水(または1M Tris-HCl)を加え混和する。上清を除き次に水(または、0.1M Tris-HCl, pH8.0)を加えよく混和する。この操作を4−5回で飽和するまで繰り返す。(最初に一晩おいた場合は1回で充分)水の場合は、最後に1N NaOHとpH試験紙にて、pHを7ー8に合わせる。クロロフォルムと混ぜない場合は、0.5%のハイドロキシキノリン(2-Quinolol)を加える。
フェノール・クロロフォルム(1:1):上述のように作成したフェノールと等量のクロロフォルムを混和する。48分の1量のイソアミルアルコールを加えるプロトコールもある。
2.エタノール沈殿(イソプロパノール沈殿)
【基本】核酸の濃縮、または、塩やフェノール等を除去する目的で行う。この操作は、蛋白質の塩析と同じ原理であり、沈殿に要する塩濃度、温度、時間、遠心の強さなどは、核酸の量や、バッファーのpHに、非常に大きく左右される。例えば、mgオーダーのプラスミドでは、塩を入れず、室温でも析出し、3000xgの遠心5分で、95%以上回収できる。逆に、ngオーダーでは、回収率を上げるために、様々な工夫(共沈物質の使用など)が必要となる。実験は、臨機応変に!頭も使うこと。下の操作は、一般的な一例である。
【操作】核酸を含む溶液に対して塩を加えて、2-2.5倍量のエタノール、または0.6-1倍量のイソプロパノールを加えて、よく撹拌する。量が多ければ室温で沈a殿するが−20℃もしくは、−70℃で20分保存し遠心する。1μg/ml以上であればこの条件で沈殿する。不純物が含まれていなければ沈殿は、透明であるが、塩などが含まれていると白い。沈殿はさらに、ー20度に冷やした70-80%エタノールで洗い乾燥させる。次の実験操作にもよるが、完全に乾燥させないことが肝心で、室温で数分放置して、エタノール臭がなくなればよい。真空遠心濃縮機を使う場合は、数十秒にする。
使う塩としては、