核酸(DNA)-2・ゲルからの精製(南 道子・粂 和彦・横溝岳彦)

改訂@1998年3月18日


第二生化マニュアル目次

アガロースゲルからのDNA断片の回収は、現在kitを用いて行われている。二つのkitに関して使用法を解説する。

1)Qiaex II gel extraction kit(Qiagen, フナコシ 20021)

グラスビーズによる回収のkitである。あとで述べるQia Quickよりは回収率は良いが、DNAのpurityは若干落ちるようである。筆者(横溝)はligationするDNAもこれで回収しているが、特に大きな問題はない。

・アガロースゲルをEtBrで染色し、高波長のUV (316 nm)で写真をとる。短波長UVではDNAが切断されてしまうので注意。
・ゲルから目的のバンドを切り出す。この際、ゲルの上下左右でDNAの含まれていない場所はできるだけ除くようにする。
・ゲルを細かく切り、エッペンドルフチューブに入れ、空のチューブに対してゲルによる重量増加を計算する。
・1 % agarose gelの場合3倍量(vol/weight)のQX1 bufferとビーズ 10 micro Lを入れ、55℃でゲルを溶かす。10分以上かけて完全に溶かすことが重要である。数分おきにチューブを振って、ビーズがしっかりサスペンドされるようにする(QX1とビーズの量についてはkitのマニュアルを参考にすること)
・卓上遠心機12,000 rpm、30秒、supを除く。遠心はアガロースを析出させないため室温で行う。
・500 micro LのQX1を加え、よくsuspendする。この段階で再度55℃で5分処理することでagaroseの持ち込みを少なくすることができる。
・卓上遠心機12,000 rpm、30秒、supを除く。
・500 micro LのPE(Wash buffer, EtOHが加えてあるか確認すること)で2度洗う。
・ビーズが白色になるまでふたをあけて放置。(37度で暖めても可。乾燥させすぎるとelutionしにくくなる)
・20 micro L TEもしくは10mM Tris, pH 8.5によくsuspendし、室温5分。(DNAが長いときは暖める。Kitの取説参考)
・卓上遠心機12,000 rpm、30秒、supを回収。
・20 micro L TEもしくは10mM Tris, pH 8.5によくsuspendし、室温5分。(DNAが長いときは暖める。Kitの取説参考)
・卓上遠心機12,000 rpm、30秒、supを回収。
・一部を電気泳動し、回収量を推定する。

2)QIA quick gel extraction kit(Qiagen, フナコシ 28106)

グラスビーズの代わりにシリカゲルが膜になってカラムになっているだけであり、原理は1)と同じである。DNAはきれいであるが、回収率が悪いのが問題点である。

・アガロースゲルをEtBrで染色し、高波長のUV (316 nm)で写真をとる。短波長ではDNAが切断されてしまうので注意。
・ゲルから目的のバンドを切り出す。この際、ゲルの上下でDNAの含まれていない場所はできるだけ除くようにする。
・ゲルを細かく切り、エッペンドルフチューブに入れ、空のチューブに対してゲルによる重量増加を計算する。
・1 % agarose gelの場合3倍量(vol/weight)のQX1 bufferを入れ、55℃でゲルを溶かす。10分以上かけて完全に溶かすことが重要である。(QX1の量についてはkitのマニュアルを参考にすること)
・(optional)ゲルを同じ量のisopropanolを加えて混合。(筆者は行っていない)
・付属のTubeにカラムを入れ、さらにDNA溶液を加えて、卓上遠心機12,000 rpm、30秒。DNA溶液が800 micro L以上の時は2回に分けて行う。遠心はアガロースを析出させないため室温で行う。
・(optional)500 micro LのQX1を加え、再度遠心。
・500 micro LのPE(Wash buffer, EtOHが加えてあるか確認すること)を加え、卓上遠心機12,000 rpm、30秒で洗う。
・Tubeを空けて、さらに12,000 rpm、30秒遠心し、PEを完全に除く。
・50 micro LのTEもしくは10mM Tris, pH 8.5を加え、室温1分。
・卓上遠心機12,000 rpm、30秒で溶出。
・一部を電気泳動し、回収量を推定する。


以下は旧マニュアル

ゲルからの核酸の断片の抽出には、アガロースゲルからの抽出とアクリルアミドゲル からの抽出方法がある。第二生化学教室では、主に前者が用いられているので、そこ からの抽出方法を4例示す。

1.DEペーパーを用いる方法 DNAが、DEペーパーに吸着し、高塩濃度でDEペーパーから溶出する ことを用いた方法。

アガロース電気泳動を行いゲルを取り出して紫外線照 射にて目的のバンドの他のバンドからの分離を確認する。目的のバンドの 進行方向側にスパチュラのへらになった部分で切れ目を入れる。そこにバ ンドの幅に切ったWhatman DE81ペーパーをピンセットにて挿 入する。ミューピッドなら100V、3−4分泳動し、紫外線照射にて核 酸が紙に吸着したのを確認し、紙を取り出す。500μlのエッペンドル フの底に針で穴をあけ、紙を入れ、さらに1mlのチューブにのせる。水 を加え軽く遠心し1mlのチューブにたまった水を取り除く。次に1M  NaCl 15μlを加え軽く遠心する。3回繰り返す。500μlのチ ューブを取り除く。1mlのチューブに水を200μlとエタノール50 0μlを加える。エタノール沈殿を2回繰り返す。

2.低融点アガロース(Low Melting Agarose)を用いる方法 アガロースを溶かしてDNAを溶出する方法。

まず、低融点アガロースに てゲルを作る。電気泳動を行う。1の時と同様にゲルからバンド同定し、 バンドそのものを切り取る。バンドの5倍程度のTEを加え、65℃で溶 かす。等量の水飽和フェノールを加えよく撹拌する。遠心後、水層(上 層)を取り、水飽和フェノール、または、フェノール・クロロフォルムで 再抽出する。水層(上層)を別な容器に移し、塩とエタノールを加え、エ タノール沈殿して、DNAを回収する。 *最初は、絶対にフェノールを使い、フェノール・クロロフォルムは使用 しないこと。 *泳動ゲルは通常のものの方が分離がよいので、通常のゲルに流して、分 離した後に、低融点アガロースの部分を作る方法もある。

3.グラスビーズによる回収方法 強塩濃度では、DNAがガラスビーズ(粉末ガラス)に付着することを利 用して、NaIなどでアガロースを溶かし、ガラスビーズにDNAをくっ つけて回収する方法。

キット化されているものを使えばよいが、Gene Clean (BIO101)は、回収率が悪く、Prep-A-Gene(BioRad)やQiaex (Qiagen)が、現在のところよいようだ。

4.アガラーゼを用いて回収する方法 アラガーゼによって、アガロースを溶かしてDNAを抽出する方法。まず 低融点のアガロースゲルを作る。電気泳動を行う。2のようにバンドを切 り出す。バンドの重さを量る。終濃度が100mMになるように5MNa Clを加える。68℃10分間インキュベートし、完全に溶かす。45℃ に温度を下げ、ゲルが固まらない内にアガラーゼ10う/μlを加える。 45℃2時間酵素を働かせる。フェノール/クロロホルム処理の後、エタ ノール沈殿してDNAを回収する。 5. phenol−freeze 法 phenolが、DNAを含んだTEをゲルから抽出する働きを利用して DNAを回収する方法。数Kb以下のDNAを回収するのに向いている。 ゲルは普通のアガロースでよい。切り出したゲルは、500μlの底に1 8Gの注射針で穴を開けた中に入れ、さらにそれを1500μlのチューブ に重ね、8000rpmで10分遠心し、細かくする。そこへTE飽和フ ェノールを加え、よくボルテックスをかける。ー80度に30分放置す る。(固まればいいと言う意見もある。)次に、室温にて、ゆっくり溶か す。1200rpm10分間遠心する。上層に透明なDNAを含んだTE が回収され、界面に白い脱水やや不十分のアガロース、そして、完全に脱 水されたアガロースは、ペレットに回収されるはずである。DNAを含ん だ溶液は、もう一度フェノール・クロロホルム抽出の後エタノール沈殿を して回収する。


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