プラークハイブリダイゼーション(石井 聡)


第二生化マニュアル目次
第1日目

適当な宿主菌のストックからNZYMアガー培地へ植菌をする。


第2日目

0.2%マルトースを含む10mlのNZYM培地にシングルコロニー由来の菌を植菌する。菌の増殖が定常期になったら(6〜8時間)、集菌する(2500rpm, 5min, 4℃)。菌を少量の10mM MgSO4に穏やかに懸濁する。完全に懸濁できたらOD600が1以下(プラスチックセルで測定)になるくらいの10mM MgSO4でさらに希釈する。最終的に約0.5に調整する。この宿主菌懸濁液は4℃で1週間程度保存が可能。10倍ずつSMバッファーで希釈した数本の希釈ファージ液を用意し、ファージ原液のタイターチェックを行なう。この際、プレート当たり101から102オーダーのプラークが現われるようにファージ液のタイター見積って希釈倍率を決める。各希釈ファージ液について以下の操作を行なう。

をファルコン2059チューブに入れ、37℃で20分間インキュベートする。予め電子レンジで溶解後、48℃でインキュベートしておいたNZYMトップアガロースで3mlにメスアップ。予め37℃でインキュベートしておいた90mmNZYMプレートにこのトップアガロースを素早く注ぎ込み、プレートを手でゆらして均一に行き渡るようにする。トップアガロースが固まったらプレートを逆さまにして37℃で翌日までインキュベート。残った希釈ファージ液は捨てる。ファージ原液は4℃で保存。


第3日目

現われたプラーク数を基にファージ液のタイターを求め、5エ105pfu/mlのタイターになるようSMバッファーで希釈する。この希釈ファージ液について以下の操作を10本分行なう(5エ105プラークをスクリーニング)。
宿主菌懸濁液 600ml
5エ105pfu/mlの希釈ファージ液 100ml (5エ104プラーク)
をファルコン2059チューブに入れ、37℃で20分間インキュベートする。予め電子レンジで溶解後、48℃でインキュベートしておいたNZYMトップアガロースで8mlにメスアップ。予め37℃でインキュベートしておいた150mmNZYMプレートにこのトップアガロースを素早く注ぎ込み、プレートを手でゆらして均一に行き渡るようにする。トップアガロースが固まったら1から10まで番号を付け、プレートを逆さまにして37℃で翌日までインキュベート。但し12時間以上のインキュベートはなるべく避ける。


第4日目

極く一部の宿主菌が溶菌せずに残って、プレート全体に一様に細かく散らばっている状態であれば良い。プレートを4℃で2時間冷やしてトップアガロースを硬くする。
 この間に直径137mmのPALL社製BIODYNE A (1.2mm)メンブレンを20枚用意し、1から10番のプレートに各々2枚のメンブレンa,bを割り当て、番号と記号をボールペンで書き込む。一方、机の上には広く幅45cmのサランラップを張り、この上に左から順に変性液5ml、中和液5ml、中和液5ml、洗い液5mlをメンブレンの直径以上の間隔をあけて滴下したラインを何個か作っておく。aのメンブレンを2本のピンセットを使って慎重にトップアガロースの上にのせる。2分ほどしたら針で非対称に培地ごと穴をあけて印を付け、ピンセットでメンブレンをはがし取る。次にbのメンブレンを同様にのせ、今度は4分後に前と同じ所に印を付けてはがし取る。
 はがし取ったメンブレンは上下を逆さまにして、サランラップの上に予め滴下しておいた変性液に浸す。2分後、隣の中和液に浸す。5分後さらに隣の中和液に浸す。5分後、隣の洗い液に1分間浸した後、ごみが付着していないかを確認してワットマン3MM濾紙の上で風乾させる。この操作を10枚のプレートについて平行して行なう。プレートは上下を逆さまにして4℃で保存する。時間が経つと多少カビが生えてくることもあるが問題はない。
 メンブレンはまとめて80℃で1.5〜2時間ベーキングする。


洗い液 / 500ml


 プレハイブリダイゼーションの前に十分漬かる量の(〜500ml)のプレウォシュバッファーで、メンブレンを1時間かけて60℃で洗う。時々容器をよく振って、メンブレンどうしをこすり合わせるようにして洗う。

プレウォシュバッファー / 500ml


 ハイブリダイゼーションはサザンブロッティングの項を参照。オートラジオグラフィーの前にメンブレンをaとbで別々にワットマン3MM濾紙に張り付けるが、この時左右上下非対称になるような形に張り付ける。
 オートラジオグラフィーの後、メンブレンの印をX線フィルムに書き込む。この印を合わせるようにaとbのメンブレンのフィルムを重ね、両方で同じ位置にあるシグナルはポジティブなプラークに由来するものと考えてよい。ポジティブなプラークが得られたならばプレートとX線フィルムを印を合わせて重ね、シグナル付近の培地を直径1cm弱の円状に楊枝でほじくりかえす。これを500mlのSMバッファーに入れ、クロロホルムを1滴落として室温で2時間放置する。その後4℃で保存し、使う直前に遠心して上清を取る。
 このファージ液は105pfu/mlオーダーのタイターがある。上清をSMバッファーで適当に2〜3種類に希釈し、90mmプレートで正確なタイターを求める。
 このタイターをもとに150mmプレートに1000pfu程度のファージ液をまき、再びプラークハイブリダイゼーションを行なう。
 ポジティブと思われるプラークを数個、今度はパスツールピペットで単離しファージ液を得る。102〜103pfu/mlオーダーのタイターがある。正確なタイターを求めた後、90mmプレートに50〜100pfu程度のファージ液をまき、さらにプラークハイブリダイゼーションを行なう。
 全てのプラークがポジティブでなかった場合には、ここからポジティブプラークをあらためてパスツールピペットで単離しファージ液を得る。
 このファージ液からファージDNAを調製する。(中村さんの執筆したラボマニュアルを参照)
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