Southern Blotting(魚住尚紀)

第二生化マニュアル目次
1975年にSouthernによって記載された転写の手法であり、標識された核酸プローブと相補的な塩基配列を持つ、転写されたDNAの領域を検出するものである。プラスミドやPCR産物のように目的とするDNAが多量に存在する場合は、以下に述べる方法は簡略化することが可能である(最初から失敗することはまずない)。ゲノムサザンのように目的とするDNAの量が少ない場合は丁寧に進めることが肝要である。以下、ゲノムサザンを念頭において説明する。
(注意!!)アルカリTRANSFERはPOSITIVE CHARGED MEMBRANEにしか使えません。NON CHARGEを使うときは10 X SSCでTRANSFERしましょう。

1.電気泳動から転写まで
1-1.用意するもの
希塩酸  0.25 M HCl
変性・転写液 0.4 M NaOH
0.6 M NaCl
中和液 0.5 M Tris-HCl pH 7.0
1.0 M NaCl
メンブレン GeneScreen Plus(Du Pont,代理店:第一化学)
HybondN+(Amersham)
---ともに正電荷を持たせたナイロンメンブレン。扱いやすく便利。
トランスファーするゲルの大きさに合わせて切っておく。
3MM濾紙 大:1枚。トランスファー液を吸い上げるため。大きさは適宜。
小:4枚。トランスファーするゲルの大きさに合わせて切ったもの。
キムタオル 適当量。転写液を吸わせる。

1-2.手順---写真〜転写は手袋着用。転写の際、空気を挟み込まないよう注意。
電気泳動 ゲノムサザンなら0.7-0.8 %アガロースゲルを用いる。 ゲルの濃度、泳動装置(mupid, 大判のゲル)は目的に応じて選ぶ。
弱い電場でゆっくり泳動した方が鮮明な結果が得られる。
(2 V/cmだと半日ないし一晩かかるがバンドの分離は良好)
写真 ゲルをエチジウムブロマイド染色し写真を撮る。
このとき定規(紫外線で目盛りが光るもの)を添えておくこと。
酸処理 希塩酸にゲルを浸け、室温15分震盪。BPB色素が黄変する。
(省略可) 長いフラグメント(>10 kBps)を細断し効率よく転写する目的で行う。
変性 変性・転写液にゲルを浸け、室温30分震盪。BPB色素が青に戻る。
転写 メンブレンは裏にボールペンで印を付けておくとよい。
(後で表裏・上下を混同しなくてすむ)
メンブレンは、まずmilli Q水、次いで変性・転写液に浸しておく。
バットの中にゲルキャストを逆さまに置きブロットテーブルとする。
3MM濾紙(大)をブロットテーブル上に置き、変性・転写液で湿らせる。
左右の端を折ってバットの底につくようにする。
バットに変性・転写液をはる。
3MM濾紙(小)1枚を変性・転写液で湿らせ、濾紙(大)の上に重ねる。
ゲルを重ねる(柔らかいゲルの取り扱いには要注意)
(表裏を反転させて置けば転写面と正対したとき左右がゲルと一致する)
メンブレンを重ねる(印が見えるようにおけばよい)
3MM濾紙(小)1枚を変性・転写液で湿らせ、メンブレンの上に重ねる。
3MM濾紙(小)2枚を順に重層する。
ゲルのまわりをサランラップかパラフィルムで覆う。
(ゲル周囲から直接、変性・転写液を吸い上げないようにする)
キムタオルを適当量(10-20枚)、重層する。
最後に重し(0.5-1 kg)をおいてできあがり。
下から3MM濾紙(大)、3MM濾紙(小、1)、ゲル、メンブレン、3MM濾紙(小、3)、キムタオル、重しの順。
急ぎの場合は15分毎にキムタオルを変えて2時間転写すれば充分。
放置する場合は5時間から一晩でよいでしょう。
中和 中和液にメンブレンを浸け、室温15 分震盪。
乾燥 室温1時間または50℃20分間
固定 80℃2時間ベーキングまたはUVクロスリンク(1-2分)
(アルカリ法の場合、理論上は転写と同時に固定されている)
(UVクロスリンカーは2生化にはありません。あしからず)

この状態で保存可。

2.ハイブリダイゼーション
Denhardt's solutionを用いるのが教科書的な方法だが、時間がかかる(プレハイ2時間、ハイブリ一晩)のが欠点である。ナイロンメンブレンであればRapid hybridization buffer(Amersham)を用いて半日行程になるので、これを常用している。

2-1.用意するもの
20 × SSC 3 M NaCl (175 g/l)
0.3 M Na3citrate・2H2O (88 g/l)
Adjust pH to 7.0 with 1 M HCl
10 % SDS
Rapid hybridization buffer (Amersham)
プローブ
2-2.手順
プレハイブリ メンブレンを2 × SSC中で室温5分程度震盪し、付着したゴミを除く。 これ以降メンブレンを乾かしてはいけない。
乾かすとバックグラウンドが高くなる。
メンブレンをRapid hybridization bufferに浸してよくなじませ、 65 ℃水浴中15分間プレハイブリする。
ハイブリ Rapid hybridization buffer 1 mlあたり106 cpmのプローブを加え、 65 ℃水浴中2時間ハイブリする。プローブはゲル濾過カラムを通し、 未取り込みの[γ32P]-dCTPを除いておく。
洗い カウントを見ながら、以下のようにメンブレンを洗うことが多い。
2 × SSC、0.1 % SDS 室温 15分
0.1-0.2 × SSC、0.1 % SDS 65 ℃ 15分
0.1-0.2 × SSC、0.1 % SDS 65 ℃ 15分
カウントが500 cpmもあれば充分バンドが検出できるので、しつこい ぐらいに洗ってよい。不十分だとバックグラウンドが高く、バンドの コントラストが低くなる。
洗い終わったらメンブレンを3MM濾紙上に置き、余分の水気を除く。
オートラ 生乾きのメンブレンを3MM濾紙にセロテープでとめ、サランラップで くるんでX線フィルムまたは富士イメージングプレートに露光する。 X線フィルムの場合、増感スクリーンを用いて-70 ℃、1-3日、富士 イメージングプレートの場合、室温、2時間から一晩露光すればよい。
第二生化マニュアル目次