ノザンブロッティング(960222和泉孝志)
第二生化マニュアル目次
1.はじめに
mRNAの解析を目的とした技術である。2次構造をとりやすいRNAを変成条件下で電気泳動し、メンブレン(ナイロンかニトロセルロース)にトランスファーする。変成方法によって1.ホルムアミドとホルムアルデヒドを用いる方法2.グリオキサールを用いる方法.3.水酸化メチル水銀を用いる方法があるが、ここでは1.の方法について述べる。メンブレンの種類によって多少相違が有る。各メーカーが薦めている方法で行うのがよい。ここではAmershamのHybond-N(Nylon)を用いた標準的な方法について述べる。
器具、試薬、実験環境をRNase freeに保つために注意が必要である。
- 乾熱できるものは洗浄後乾熱
- 泳動層など乾熱出来ないものは洗浄後、5%過酸化水素水に30分浸し、エタノール、蒸留水でよくすすいで乾かす。
- 水はMilli Q水をオートクレーブして用いる。試薬は、オートクレーブするか、出来ないものは漉過滅菌する。
2.準備するもの
- RNA:もちろん分解していないもの。量は目的とするRNA含量による。例えば、全RNA20μgかpoly(A)+RNA2μgなど。
- プローブ:比活性>5x108dpm/μg以上が望ましい
- 脱イオン化ホルムアミド(小分けして-20℃で保存、室温では容易に酸化する)
- 脱イオン化ホルムアルデヒド(37%, 直前に脱イオン化、保存はできない)これらの脱イオン化は30mlの試薬に対して20mlの樹脂(Bio-Rad AG501-X8 etc.)を加えて静かに撹拌した後ろ過か遠心によって樹脂を除く。
- 10 x MOPS buffer for 1000 ml
- MOPS 41.854 g (0.2 M)
- NaOAc 6.804 g (0.05 M)
- EDTA 3.722 g (0.01 M)
- pH 7.0 (with 5N NaOH) autoclave (turn to yellow)
- RNA sample buffer (make at use, or stock at -20℃stock only for 2 weeks)
- 1 x MOPS, 50% formamide, 2.2 M formaldedyde, 10 mM EDTA(to make 100 μl: 10 x MOPS 10 μl, formamide 50 μl, 37% formaldehyde 18 μl, 0.5 M EDTA 2 μl, DEPC-water 20 μl)
- Dye buffer
- 50% grycerol, 0.1% BPB, 0.1% XC, (0.5 mg/ml EtBr:注)
- 1% ararose gel (0.66 M formaldehyde gel, 2.2 M, 0.22 M の方法もある )
- 10 ml MOPS, Sterile Water 85 ml, agarose 1 g
- autoclave 5 min, cool down to 60℃, add 5.5 ml formaldehyde and stir pour into clean gel apparatus in draft
- 20 x SSC
- 50 x Denhart: 1% BSA, 1% Ficoll, 1% polyvinylpyrrolidone
- prehybridization soln.: to make 50 ml stock volume
- 50% formamide 100% 25 ml
- 0.75 M NaCl 5 M 7.5 ml
- 20 mM Tris-HCl (pH 7.5) 1 M 1 ml
- 2.5 mM EDTA 0.5 M 0.25 ml
- 5 x Denhart 50 x 5 ml
- 10% dextran sulfate 50% 10 ml
- 40 μg/ml ssDNA 4 mg/ml 0.5 ml (voil & chill)
3.手順
- RNAをエタノール沈澱し乾燥させ(完全に乾かすと解けにくくなる)sample buffer 10 μlに溶解させる。(もともとの容積が2μl以下のときは8μlを加えればよい)
- マーカー:通常28S, 18SリボゾームRNA。DNA制限酵素断片でも可。ただし変成条件下(1本鎖)なので染色されにくく約5倍量必要。サイズはDNAもRNAもほぼ同じに泳動される。
- 65℃15分処理し、Dye buffer 3 μlを加える。
- ゲルにアプライし1 x MOPS bufferで100 V 3時間泳動する。BPBが3/4にくるまで。
- XCはほぼ28SRNAと同じ位置に泳動される。ゆっくり泳動したほうがバンドはきれい。ホルムアルデヒドのにおいがするのでカバーをしてドラフト内で行うのが望ましい。
- 泳動後、定規(蛍光マーカーの付いたもの)とともに写真をとる(注)。
- ゲルをトレイに移して10xSSCに20分間、2回浸してゆっくりしんとうしホルムアルデヒドを除く。
- そのままサザンブロティングのときのようにメンブレンにブロットする(10 x SSC)。UV下で写真をとっておく。針でゲルの位置をマークしておく。乾熱処理もしくはUV照射も同様に行う。
- メンブレンを3 xSSCで湿らせた後、prehybridization液中にシールし、42℃、3時間、できれば緩やかにしんとうさせながらプレハイブリダイズする
- 沸騰(5 min)後、急冷したプローブ(>2x106 cpm/mlとなるように)をシールバッグに加え、再シールした後よく混和し、さらに別のバッグにいれてシールし42℃で一晩以上ハイブリダイズする。
- 洗い
- まず2 x SSC / 0.1%SDS, 60℃ 10分、2回インキュベートする。
- ここまでの廃液は32Pのカウントが高いので水系Pの容器に入れ減衰を待つ。
- GM菅でおおよそのカウントを記録しておく。
- 必要に応じて、0.5 x SSC / 0.1%SDS, 60℃ 10分、2回、さらに0.1 x SSC / 0.1% SDS, 60℃ 10分、2回などでインキュベートする。
- メンブレンをろ紙ではさんで風乾し(完全に乾かすとリハイブリできなくなる)、サランラップで包んでオートラジオグラフィーを行う。
- 32P標識したプローブの場合は増感紙2枚にはさんで-70℃で感光させる。
- リハイブリダイズ
- ナイロンメンブレンは強度が強いため反復して使用できる。
- メンブレンを、5 m M Tris-HCl (pH 8.0), 2 mM EDTA, 65 ℃で1-2時間洗浄する。
4. 注意点
エチジュウムブロマイドは入れない方がきれいに泳動できる。過剰に入れるとスメアーしたりブロッティング効率が低下したりする。したがって分子量マーカーとしてリボゾームRNAを端に泳動してその移動度を知りたいときは、エチジュウムブロマイドなしで泳動し脱ホルムアルデヒド後その部分を切り離して染色し写真を撮っておくことを勧める。
以前のAmershamのHybond-N+(Nylon、ポジティブチャージ)のマニュアルにはHybond-N+とラピッドハイブリバッファーの組み合わせを勧めているが、バックグランドが高すぎて勧められない。Hybond-Nの方がきれい。Hybond-Nとラピッドハイブリバッファーの組み合わせでもうまくいくようであるが、ここに記したハイブリ液との厳密な比較や、条件検討(時間、温度)を行っていないので確かなことは言えない。------経験のある方、追加記載をお願いします。
第二生化マニュアル目次