CAM 230による細胞内カルシウムの測定(高野朋子)

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 CAM230は、CAF100と異なり、固着状態の細胞のまま細胞内カルシウム測定ができ、必要細胞数は少なく、perfusionできるという利点がある。一方、細胞内カルシウムの絶対値を求めるcalibration は幾分面倒になるという不利益もある。
 以下の方法はCHO細胞の場合であり、細胞の種類が異なるときは、バッファーの組成やfura-2のloadingの方法が異なる可能性があるので、その都度検討の必要がある。

1 細胞の準備
 測定の2日前に、6 wellまたは3.5cmのdishに予めオートクレーブしたカバーグラス(MATSUNAMI micro cover glass No.1 25mm thickness 0,12-0,17mm)をいれ、その上から細胞をまく。測定時に80%位の細胞密度になっているのがちょうど良い。CHO細胞の場合は2 x 105/dish位。
*細胞によっては測定の前日にまいても大丈夫なこともある。
*細胞の形はカバーグラス上では通常の培養皿上と異なるのが普通である。

2  Fura2のloading
 Hepes-Tyrode bufferを用意する。(NaCl 140mM, KCl 2.7mM, CaCl2 1.8mM, NaHCO3 12mM, D-glucose 5.6mM, MgCl2 0.49mM, NaH2PO4 0.37mM, Hepes/NaOH 7.4 25mM) 細胞のviabilityのために、0.1%BSAを加える。
 上記のHepes-Tyrode buffer/0.1%BSAに最終濃度3μMとなるようにFura-2 AM(Dotite 343-05401)を加えてよく撹拌する。(Fura-2 AMは、DIMSO溶液で販売されているので、到着したらすぐ15μlずつ分注しておくと良い。こうしておけば、5mlバッファーに15μlのFURA-2を加えるとちょうど3μMとなる)。各々のdishの培養液を吸引し、このFura-2溶液を1mlずつ加えて、遮光条件下で37℃1時間または室温で90分、Fura-2を取り込ませる。

3 細胞内カルシウム濃度の測定
 測定開始10分前にシステムコントローラー(三段重ねの機械の真ん中)後面のメインスイッチをonにして、キセノンランプをつけておく。最上段の温度コントローラーと最下段の励起分光器はシステムコントローラーに接続されているのでメインスイッチをonにすれば、自動的にonになる。この時、温度コントローラーの過熱を防ぐために水道水の潅流を始める。

1)システムコントローラーのスイッチを以下のように設定する。

2)励起分光器を以下のようにセットする。

3)測定用の台(細胞をのせる部分)の直前の部分まで潅流用のチューブ内を潅流用のバッファー(Hepe-Tyrode/0/1%BSA)でみたしておく。(潅流用のバッファーは、ビーカーかボトルに入れて、37℃ water bathに入れておく)。

4)Fura-2を取り込ませた細胞の付着したカバーグラスを注射針などを利用して取り出し、裏側の水滴を拭き取ってから測定用の台の下半分のあなの部分にはめ込む。パッキングをのせた後、測定用の台の上半分をのせ、4つのネジをしめて固定する。(パッキングが入っているのでそれほどきつくしめる必要はない)。最後に水路用の溝がついたカバーをはめ込んでペリスタポンプをスタートする。この時に水路の下流にあたる方を少し上にあげて空気が完全に流れ去るのを確認してから顕微鏡のステージ上にのせる。時にガラスが割れて水が漏れている事があるのでこの時は測定をあきらめて新たなサンプルに変える。

5)顕微鏡の通常光源をonにし、顕微鏡の光路つまみ(顕微鏡の正面向かって右側下の黒いゴムカバーのついた2つのつまみの内、上のほう)を接眼レンズ側(押し込んだ状態)にする。対物レンズはfluorolensを使用する。

6)サンプルを通常光源で観察し、サンプルが視野の中心に来るようにする。

7)通常光源をoffにし、shutter(システムコントローラー上の)をopenにして励起光をサンプルに照射する。

8)試料からの蛍光を観察しながらサンプルの目的の部分に励起光が照射されるように、顕微鏡後面にある視野絞りレバー(F O←→Cと書いてある)を動かす。自分の測定したい細胞だけに視野を絞る事ができる。

9)顕微鏡の光路つまみ(上記)を蛍光検出器側(ひいた状態)にする。

10)顕微鏡の少し左側にある紐状のスイッチを押すと励起光がレコーダーに伝わるようになる。レコーダーの設定はシグナルの強さによるが、基本的には、数個の細胞で測定する場合、PEN1(340);0.5-1, PEN2(380);0.5-1, PEN3(Ratio);0.5 位が適当である。
*この紐状のスイッチを押すと、顕微鏡のステージ部分からのシグナルが蛍光検出器に伝わるようになるので、強い光がはいると蛍光検出器の機能に異常をきたす事がある。従って、この状態では、基本的に暗幕を閉める事が望ましい。また、この状態で通常光をonにする事は禁忌である。

11)Ratioの値が安定したらペリスタポンプを一度止めてからチューブの先端をリガンドにつけ再びポンプをまわす。この瞬間からリガンドは流れ始めるが、チューブの中を流れるlag timeがあるので、時間経過が重要な場合にはこのlag timeを予め測定しておく必要がある。
*base line ratioの値は細胞によって異なる事が考えられるが、CHO細胞の場合は0.4-0.5の時、良いシグナルが得られた。
*リガンドの投与開始時は最も空気の混入が起こりやすいので、十分な注意が必要である。もちろん三方活栓などをうまく利用して自分なりのより洗練されたリガンド投法法を工夫しても良い。
*リガンドの投与を中止し、バッファーでのwashに入るときも同様の注意が必要である。

12)測定が終わったら、必ずコントロールパネル上のshutterと、顕微鏡と蛍光検出器の間を遮断するつまみ(前述の紐状のスイッチの付け根の少し左側後面にある)をoffにする習慣をつける。最後に水道水を止める事も忘れずに。

参考; 1 実験医学臨時増刊 細胞内カルシウム実験法 1989
2 CAM230取扱い説明書(CAM230の近くにおいてある)

Calibration
Iino, M. Biphasic Ca2+ dependence of inositol 1,4,5-trisphosphate-induced Ca release in smooth muscle cells of the guinea pig taenia caeci. J. Gen. Physiol. 1990, 95,1103-1122 参照のこと。

1)G10RとCaG10Rを調製する(上記論文参照。pHの調整が重要)。

2)各々を5mlづつとり、Fura2(K salt)をfinal 3mMとなるように加える。

3)この2液を様々な比で混合し、pCa 4.5-7.5の液をつくる(混合比は上記論文参照)。

4)測定用のカバーグラスの上にシリコンオイルを薄くのばし、そのうえ3)で調製した各pCaの液を1μlづつのせる。一度に3種類まで。

5)おいた水滴の中心部に視野をしぼり、340/380 ratioを測定する。(back groundはサンプル液ののっていないところで測定したが、非常に小さいので無視してよいと考えられる)

6)参考までに1993年6月に行ったCalibrationの結果を示す。

Ca pCa 340/380
7.5 0.55
100nM 7 0.52
6.5 1.84
1mM 6 2.1
5.5 3.3


ratio=10.866-1.416 x pCa (r=0.920)

  困ったときの相談先;第二薬理 飯野先生
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