東京大学医学部生化学教室
東京大学大学院医学系研究科 分子細胞生物学専攻 生化学分子生物学 細胞情報部門
Department of Biochemistry and Molecular Biology, Faculty of Medicine, The University of Tokyo
研究室FAQ - よくある質問にお答えします (2006/2/5 版)
キーワードは「脂質」です。シグナル分子としての脂質メディエーターの生合成と作用機構(受容体、シグナル伝達)、また、膜脂質の形成機構やそのダイナミズムなどを研究しています。生命にとって脂質膜は大変重要な存在です。両親媒性の脂質膜があり、始めて細胞が誕生したわけですから。最近、羊土社から出版された「脂質生物学がわかる」(清水孝雄編)という本に脂質研究の現在と未来がよくまとめられています。
メタボローム寄付講座は田口良教授(名市大出身)、奥野利明助手(細胞情報出身)と数名の大学院生、研究生で構成されています。質量分析計を駆使した脂質メディエーターの解析と定量、また、細胞膜脂質の構成のダイナミックな変化などを解析しており、また、脂質修飾されたタンパクの解析(プロテオミクス)も行っています。両研究室はセミナーを合同でやっており、また、共同研究も進めています。
新人に対しては、教室のテーマの中からいくつかを提案し、本人と相談で決めます。スタッフ、PDが直接に実験を指導します。研究の大きな方針は教授とスタッフで相談して決め、日々の具体的な実験手技はスタッフと相談します。
まず、教育を重視するという点です。セミナーや輪読会などは多めですが、幅広い知識や考え方を持っていた方が将来伸びるとスタッフは信じています。生化学の教室ですが、遺伝子工学を中心に発生工学(ES細胞作りまで)、細胞生理学、シグナル解析など比較的幅広い技術背景を持っています。機器はよく揃っており、無駄使いしなければ、研究費に困ることはありません。しかし、高い試薬など買うときは必ず教授の承認がいる仕組みになっています。マウスは大量に飼っていますが、週一回はアルバイトの学生が床替えをし、一回は研究者自身で変えることにしています。観察することは非常に大切なことです。
よっぽどおめでたい人物でない限り、みなそうした不安を持ちながら研究しています。研究の世界では誰にも保障がない代わり、誰にでも可能性があります。とにかく実験が好きで、生命現象への好奇心があるなら、研究をする資格があるというのが教授の持論です。その際、自然を観察して、何かオリジナルなものを発見できるかどうか、というのが鍵ですね。研究者の成功とは何をさすのかわかりませんが、研究成果+運+タイミング、すべてが絡んでいます。誰にも将来は予測できないです。「運・鈍・根」とは良く言ったものです。
それは、だれもわかりません。知力、体力、根気は必要条件ですが、十分ではありません。知力とは自然科学、生命科学に対する幅広い知識を土台にした好奇心と言えます。また、従来の全ての研究結果を疑う必要がありますね。研究結果で論文になるのは、ある条件で、という制約がいつも付いているのですから。それに間違った結果がたくさん、一流誌に出ています。それから、やはり人と協調できる性格は必要ですね。愛想がいい必要はないけど、謙虚さが足りない人は長い目ではうまくいかない例が多いですね。みんなそれなりに助け合っているわけですから。英語力も重要ですね。喋る力と読み書きでしょうか。体力が無いと、自然に根気も無くなるので、週に一回くらいは運動して、体力をつけた方が良いです。教授も毎週テニスに励んでいます。
育英会の奨学金が月額12万くらい(返済の義務あり)。それに、最近ティーチングアシスタント (TA)、リサーチアシスタント (RA) というシステムがあり、毎月数万円くらいの報酬が出ます。さらに、21世紀COEで院生に謝金を支払うシステムもあります。また、生活が大変な人にはアルバイト(看護学校の先生とか、健康診断とか)を紹介します。現在、5名の大学院生が日本学術振興会の特別研究員(DC)の資格を持ち、給与が支給されています。修士時代や博士課程の早い時期にしっかりした論文を書くと、この様なチャンスもあります。
今の時代はパーマネントの職につくのは大変です。しかし、ポストドクのポジションはかなりあると思います。教室の卒業生の現職が書いてありますので、参照して下さい。この2年ほど、助手のポジションが見つかる人が多かったです。助手のポジションを辞退して、海外へ行った人もいます。基本的には、みな自分で見つけてきています。教授は推薦状を書きます。「就職が大変だから」「もう少し学生でいたいから」という気持ちで博士課程に来ると大変です。4年後にはさらに、就職は難しくなると思います。博士課程を卒業したら、ポストドクになるか、海外へ留学して、良い成果を挙げて、初めて次のチャンスが開けます。最近の学生の傾向としては単にアカデミックなポジションだけでなく、海外のベンチャーなどに興味を持つ人も増えています。また、パーマネントの職はほとんど無くなり、原則、3−5年の期限付き(任期付き)ポジションになって行くでしょう。
土曜日は昼間に勉強会がありますし、研究するのが基本です。教授は家が近いこともあり、土曜日は必ず大学(いないときは多分テニス)、夜も11時過ぎまで仕事をしています。日曜日は細胞培養や動物の世話などに必要な場合を除いて、原則は休みです。もちろん、問題はしっかりした成果を出して、論文を書くことで、働く時間では全く評価されません。ラボにいても、ただ机の前に座っていたり、セミナーで寝ているのは問題外です。しかし、ハードワークしないで良い論文を書いた人はほとんどいません。
ラボの中は禁煙でしょうか。夜はビールを飲んでいいんでしょうか?
もちろん、全館禁煙です。タバコを吸うような人はサイエンティストに向かない、と教授は言っています。実験室での飲食は危険防止のため禁止ですが、セミナー室でお茶を飲んだり、夜酒盛りになることもたまにあります。
テニスをしたり、バトミントンをしたり、基本的には体を動かすのが好きなようですね。自分から「これはするな」とは言いませんが、「これ面白いんじゃない」と巧みに誘うようです。相談に行くと、とても喜んでたくさん話します。いまだにタンパクと代謝学が大好きで、この話になると、目が輝きます。それから、やはり、B型性格で、明るく楽天家ですね。楽天的じゃなくちゃ、25年も研究できないですよね。それから、小説好きですね。教授室は開放されていて、会議に使ったり、本を借りたりしています。
中村助教授は19年間企業で働き、創薬を続けてきましたが、教育と自由な研究に燃えてこの4月からアカデミアに加わります。石井講師は東工大理学部卒で、社会人の経験の後、現職にあります。北助手と進藤助手はそれぞれ農学部と理学部の出身で、二人とも代謝を中心に研究を進めています。高橋助手(医学部共通機器部門所属)は、質量分析、セルソーターなど機器分析の専門家です。常勤スタッフとPDがスタッフ会議を構成し、ここで研究室の方針を決めます。
平成18年に4名の新人(医学部3名、薬学部1名)が加わり、院生は博士14名と修士1名となります。学生のバックグランドは様々で、お互いに刺激となっています。東大医学部にPh.D-M.Dコースというのがあり、現在、2名の学生がこのコースで大学院生となっています。
平成17年11月に医学部教育研究棟(新棟)の6階に引っ越ししました。混み合った実験室と開放的な多目的セミナー室の対比がユニークです。
現在は「特別推進研究」を獲得し、研究を進めています。今後どの様になるかはわかりませんが、教授は「良い基礎的研究を地道に進める」という方針を貫いています。